見掛けたら飲んでおきたい一本

朝日酒造・久保田 萬壽 無濾過生原酒

酒は難しい。後学のために、おいしい酒を教えてくれと言われても、その人の好みが判る訳でもない。まして、自分がおいしいと思う酒がその人にとっておいしいとは限らない。

だから、自信があろうとなかろうと、その人を思おうが、思うまいが、私という枠から出たらベストチョイスではなく、ベターチョイスになる。Bestを「最善の」という意味で捉えれば、エベレスト、チョモランマ、サガルマータで、8,848mであって欲しい。唯一無二。ヨーロッパではとか、多摩市ではとか、枠を狭める話ではない。上には上があると私は考える。

だから、最初は誰でも、雑誌で紹介された、テレビで観た、〇〇さんがおいしいと言っていたという、誰かの評価に頼りながら酒を選び飲む。その先は自分で知らない世界に足を踏み入れて、あれこれと種類を飲んで行くしかない。

多摩独酌会では、さまざまな酒をそんなバイアス(変調、ここではPrejudice)を加えて判断をして欲しくないということで、蔵元の自信作を出品酒として[フルブラインド(すべてを隠す)]でやっている。

そういう中でも、こういう酒がある。多摩独酌会カタログの会には絶対に並べられない一本だが、久保田萬壽無濾過生原酒。消費者向けには出されない酒で、料飲店のみに販売される、らしい。

その売り方の是非を問う話ではない。

日本酒を支え続けている蔵のひとつである久保田蔵の意地を垣間見る気がする味わい深さだ。絶妙なバランスが奏でる味わいである。しかも、料理に負けない、勝たない、調和する。しかも、言い訳ひとつ無いシンプルなラベル。

どこそこでも飲めるという酒ではないが、見掛けたら飲んでおきたい一本として覚えておいていただければ、日本酒とその文化に携わる一人といて幸いである。

◆蛇足の一杯◆
飲みたいというあなた、ご連絡をいただければお教えしよう。ただ、聖蹟桜ヶ丘までお越しいただかなければならない。また、いつまでもある訳ではないし、料飲店価格で一合2,000円と高価だ。飲むとなると覚悟が必要だ。覚悟ができる間にその店では完売となってしまうかもしれない。その時はまた来年、この時期に待ち構えるしかない。

おいしい酒が好き!

なぜ日本酒が好きなんだろう?